日々、顧問先から労務相談が寄せられる。
横領による解雇、無断欠勤、集団退職、メンタルによる休職…
社内における、不倫絡みも少なくない。
では、問題である。
社内不倫を理由として、解雇ができるか?
ケースバイケースだが、不倫は業務には関係なく、私的な領域であるため、
一般的には懲戒を課すことは難しい。
仮に、就業規則にそうした定めがあったとしても、無効になることが想定される。
恋愛は自由である。
「運送会社のバス運転手は、
妻子があるにもかかわらず未成年の女性車掌と不倫関係となった。
その結果、女性車掌は妊娠・中絶、そして退職することになり、
これを重く見た運送会社が当該バス運転手に解雇処分をした」
事案について、裁判所は、
「バス運転手と女性車掌の不倫関係が、
それ自体職場の秩序を著しく乱す行為であり、
これによって現に当該女性車掌を退職させ、
他の女性従業員に対して不安と動揺を与え、
さらに求人についての悪影響等をもたらしたこと。
運送会社の社会的地位、名誉、信用等を傷つけるとともに、
運送会社の正常な業務運営を阻害し、運営会社に損害を与えたこと。」
を理由として、解雇を認めたケース(東京高裁昭和41年7月30日判決)がある。
他方、
「妻子ある同僚男性と不倫関係となった女性社員が、
不倫の事実が社内だけでなく取引関係者にまで知られることになったため、
企業側が女性社員に懲戒解雇処分をした。」事案で、裁判所は、
「女性社員による不倫行為は、就業規則に定める『素行不良』に該当し得るものの、
女性社員及び不倫相手の地位、職務内容、交際の態様、会社の規模、業態等に照らして、
『職場の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えた』
とまでは認められない。」
として、解雇無効とした(旭川地裁平成元年12月27日判決)。
こうした対極の裁判例を見てみると、
当該社員及び不倫相手の地位、職務内容、交際の態様、会社の規模、業態等に照らして、
当該社内不倫が、職場の風紀・秩序を乱し、正常な企業運営を阻害したか、
企業に損害を与えたかどうかが、判断に大きく作用するものと考えられる。
裁判は、裁判官の匙加減である。
私達は思い込みや偏見を止めて、裁判例を研究するなど、
実務に直結した知識を日頃からブラッシュアップしておく必要がある。
そうでなければ、顧問先に対して適切なアドバイスはできない。
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