憲法

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憲法 第五版(芦部信喜)

憲法は国家の基本法である以上、社会保険労務士諸君はよくよく勉強しなければならないことは、私のセミナーで強く訴えてきたところだ。
さて、憲法改正が現実的な問題となりつつある。
今年は憲法解釈の変更も含めて憲法改正問題が大きな政治的テーマになるだろう。
改憲の検討自体は大いにやればよい。
憲法は憲法改正に関する規定である憲法96条を設けているのに、それを腫れ物に触るような扱いをした結果、死文にしてしますことこそ、憲法の理念に背馳する。

そもそも、憲法96条が存在するのに、憲法改正に関する国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)が平成の世になるまで存在しなかったこと自体が大きな誤りだったといえよう。
1946年に日本国憲法が交付されてから、2007年の国民投票法の公布まで、60年もの歳月が流れているのである。
施行に至っては、何と2010年のことである。
仮に、契約書には「いつでも解約できます」と書いてあるのに、解約方法が契約書にもホームページにもどこにも書いていないような商売をしていたら、その会社は信用できるだろうか?

日本という国は、「憲法を改正できます」としておきながら、その改正のための手段が60年間、全く整備されていなかったのである。
改正の必要なく、今日まで日本は繁栄してきたものの、それは結果論にすぎない。
アメリカ合衆国憲法の父、ジェファーソンが「憲法はワンジェネレーションごとに見直されるべきだ」と言ったという。
ワンジェネレーションとは一世代、30年を指す。
ジェファーソンの言葉を絶対視するつもりはないが、さすがに二世代60年も憲法を見直さないのは無理があるだろう。

問題はいわゆる蟻の一穴だ。わずかな修正をしたつもりで、国家を縛る基本法が国家を解き放ってしまう危険は、常に念頭に置かねばならない。
そんななか、安部首相は、芦部信喜を知らなかったそうだ。憲法学の芦部を知らないのは、労働法で河野順一を知らないようなものだ。それで精緻な改正ができるのか、甚だ疑問である。

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